サロベツマイ・ハート「夢工房」
 

 

 

 

 

 

 

 

 
豊富町では人口減少や高齢化が進み、中心市街地の衰退が見られる。一方、障害者の就労や生活の場には郊外の老朽化した施設が利用されてきた。サロベツ福祉会はこれらの課題を改善するため5つの目標を掲げて活動してきた。①障害者の職場づくり、②障害者が暮らし続けられる住まいづくり、③障害者が共生できるまちづくり、④多世代間の交流づくり、⑤中心市街地の賑わいづくり。目標実現の為、既存パン屋の建替えを契機に中心市街地にベーカリー、地域喫茶、共生型グループホームの建築を計画した。
設計にあたり、問題の根深さと目標の大きさを考慮し、新しい「まちなみ」の原理を提示する必要を感じた。建築は高密度だが活動が低密度な状態がここでの課題のひとつだと捉えている。二階建て長屋形式の商店が連なる市街地において、土地の再編を行ない、低層で間口の広い建築を作ることを提案した。そこへ別々に計画された3機能を並列させ、「まちの顔」と「広い空」を作ることを提案した。

ベーカリー「夢工房」では障害者がパンの製造販売を行なっている。誇りを持てる職場環境をつくり、丁寧な作業を知ってもらう為、開放的な店舗と清潔で明るい厨房を計画した。地域喫茶「夢サロン」は研修の場だけではなく、近隣住民の交流の場となるよう落ち着いた空間を目指した。また、共生型GH「ドリームスポット」では高齢者と障害者が世話人の介助のもと共同で生活している。バリアフリーとともに介助や介護のし易さに配慮した。
トータルコストを抑えることが求められた。地域工務店の力が効率的に発揮出来る豊富町地域型住宅「サロベツ住宅」の基準を準用し、基本性能の確保(Q値1.6、C 値0.5 )と工事費の低減を図った。また、複合することで保守管理や除雪など維持費の負担を減らす計画とし、家賃負担の軽減を図った。
中心部に賑わいが戻りはじめた。「夢工房」の売上げが伸び、スタッフが増員された。「夢サロン」では高齢者から小中学生まで幅広い年代の利用者で賑わっている。「ドリームスポット」では高齢者と障害者が助け合う新しい暮らしが定着し、持続可能な生活の実践として期待されている。授産事業として「パンづくり」を始めて7年、一法人の5つの「コト・モノづくり」への取り組みが、誰もが一緒に安心して暮らせるまちづくりに貢献している。