北海道大学 オープンイノベーションハブ エンレイソウ

設計・工事監理監修:北海道大学大学院工学研究院 都市地域デザイン学研究室 瀬戸口剛, 小篠隆生, 渡部典大
設計:株式会社エスエーデザインオフィス一級建築士事務所
設計協力:一級建築士事務所ティーサイズ
施工:辻野建設工業株式会社 撮影:酒井広司

本計画は、北海道大学札幌キャンパスの中心に立つファカルティハウスエンレイソウの改修計画である。大学のファカルティハウスとして約30年間使用された建築をリノベーションし、研究者と企業・自治体等が議論しオープンイノベーションを創出する場へと転換を図っている。既存建築は、大学キャンパス内を南北に流れるサクシュコトニ川の水が流れ込む大野池に隣接し、キャンパス内でも特に豊かな自然に囲まれる場所に立地していた。大野池周辺の自然を堪能するように円弧状に平面が計画され、池に向かって傾斜する断面形状となっていた。またライムストーンや木練付仕上の壁など、自然素材で構成されていた。改修計画では、既存建築の持つ「敷地周辺の豊かな北海道大学キャンパスの自然要素との関係性」「上質な自然素材仕上」の特徴を活かしながら、空間構成要素を再編し「オープンイノベーションハブ」という新たな機能に対応するデザインを目指した。大野池に面するメインラウンジは、屋内外の連続性を高めるように屋外に向かって緩やかに傾斜するナラ材の木ルーバー天井をデザインした。レストランとラウンジとして個々に利用されていた空間に対しては、床レベルを揃え、壁をナラ材の木ルーバーとし共通のアイコンを施すことで、一体的な利用も可能な連続性を創出した。また、吹抜の天井からは、四角形が幾重にも重なる線状の照明をデザインしている。全体として、多様なアクティビティを受けとめるプラットフォームとなるよう、無彩色で素材感を感じられるものとしている。家具計画は、イノベーティブで多様なアクティビティを促進する装置として、利用者の気分を向上させるカラフルな色を用いて、様々な姿勢で利用可能で、組合せにより様々な人数やシーンに対応可能なものを選定した。

文:渡部典大